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業務改善

見積作成ソフトは見積のどこを速くするのか──導入前に分ける5つの工程

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現場調査のメモと図面を机に広げ、数量を拾い、単価を当て、人工を計算する。前職でリフォームの見積を作るとき、私が自分で担当していたのはここまででした。実務では、この先に自社の様式への清書と送付が続きます。

建築・リフォーム会社向けにAI導入支援を行う株式会社Polestar AI の深瀬雅己です。

先に結論をお伝えします。見積作成ソフトが速くするのは、清書・計算・保管の3か所です。何をいくつ拾うか、どの単価を当てるかを決める部分は、ソフトを入れても社長の手元に残ります。

だから、製品の一覧を見る前にやることが1つあります。自社の見積を工程に分けて、どの工程に時間が溶けているかを決めることです。そこが決まると、見るべき製品の型も、入れたあとに増える仕事も先に見えます。

この記事で分かること・向かない人

この記事で分かることは4つです。

  • リフォームの見積を5つの工程に分ける分け方
  • どの工程がソフトで埋まり、どの工程が人に残るのか
  • 重い工程ごとに、どの型の製品を見ればよいのか
  • 入れたあとに増える仕事と、契約前に自社で確かめる手順

逆に、向かない方もお伝えしておきます。「結局どの製品が一番いいのか」を1つ挙げてほしい方には、この記事は向きません。製品名のランキングも、料金の一覧も載せていません。そこは比較サイトの一覧がよく整理してくれていますし、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も、各社の製品ページで確かめるのが確実です。

ここで扱うのは、その一覧を見ても決まらない部分だけです。自社の見積のどこが重いのか、という部分です。

見積作成ソフトは、見積のどこを速くするのか

速くなるのは、清書・計算・保管の3か所です。数量を拾う判断と、単価を選ぶ判断は速くなりません。

製品の説明に並ぶ機能を見ると、この線引きがはっきりします。

速くなるのは、清書・計算・保管の3か所

比較記事に載っている機能は、だいたい次の形に収まります。

  • 見積書・納品書・請求書を同じデータから作る
  • 過去の見積を呼び出して、今回の案件に流用する
  • 小計・消費税・諸経費を自動で計算する
  • 商品や単価をあらかじめ登録しておく一覧から、項目を呼び出す(製品の説明では「マスタ」と書かれています)
  • PDFにして送り、送った履歴を検索できる状態で保管する

どれも、手が動いている時間を減らす機能です。Excelで作っていた会社なら、計算式の壊れや転記の取り違えも減ります。ここは製品の説明を信じていい部分だと考えています。

速くならないのは、何をいくつ拾うかを決める部分

一方で、現場調査のメモを見ながら「ここは下地からやり直す」「この壁は巾木まで交換する」と決める部分は、ソフトを入れても減りません。数量を拾う作業も、どの単価を当てるかの判断も同じです。

掛け率をどこまで乗せるか、人工を何人で見るかも、会社の考え方が入る部分です。ここを自動で埋める製品があっても、最後に見るのは人になります。

「それなら、入れても意味がないのでは」と思われるかもしれません。私はそうは考えていません。問題は、自社の見積の時間が、速くなる3か所に乗っているのか、速くならない部分に乗っているのかです。そこが分からないまま一覧を見ると、どれも良さそうに見えて決まりません。

リフォームの見積を5つの工程に分けて見る

分け方は5つです。現調のメモを形にする、工事項目と数量を拾う、単価を当てて金額にする、自社の様式に清書する、送って履歴を残す。

工程やっていることソフトで埋まるか
1 現調のメモを形にする野帳・写真・採寸を読める形に起こすほとんど埋まらない
2 工事項目と数量を拾う何をいくつやるかを決めて並べる判断は残る
3 単価を当てて金額にする単価を選び、掛け率と人工を乗せる計算は埋まる。選ぶのは人
4 自社の様式に清書する見積書の形に整えて体裁を揃えるほぼ埋まる
5 送って履歴を残す送付・保管・検索ほぼ埋まる

受注したあとに原価と突き合わせる作業は、この5つに入れていません。見積を出したあとの話で、見るべき製品の型も変わるからです。あとの章で別に触れます。

工程1 現調のメモを形にする

採寸した数字、現場で撮った写真、施主との会話の中で決まった追加。これが野帳と頭の中に散っている状態を、見積を書ける材料にそろえる工程です。

ここは製品の機能一覧にほとんど出てきません。出てこないので、比較記事を読んでも時間が減る実感が湧かない。それでいて、夕方に事務所でやり直しが起きやすいのはこの工程です。

工程2 工事項目と数量を拾う

工事項目を並べ、数量を拾う工程です。経験が要る部分で、社内で任せられる人が限られます。社長の時間が取られる原因は、多くの場合この工程にあります。

見積作成ソフトの大半は、ここを埋めません。埋めようとしている製品は、建築向けや製造業向けとして別の棚に並んでいます。

工程3 単価を当てて金額にする

拾った数量に単価を当て、金額にする工程です。自動計算が効くのはこの工程で、ソフトを入れると計算の間違いは確かに減ります。

ただし、当てる単価の性質は1枚の見積の中で混ざります。定価をもとにした数字、実際の仕入れに近い数字、標準の工事費が含まれた数字。これが同じ表に並んだまま自動計算されると、金額の理由を説明しづらくなります。単価の性質が混ざる点には、特に注意が必要です。

工程4 自社の様式に清書する

表紙を付け、内訳を整え、自社の体裁に揃える工程です。協力会社から届いた見積を自社の様式に打ち直す作業も、実務ではここに入ります。

製品が一番得意なのはこの工程です。社名・工事名・項目を入れれば、整った帳票がそのまま出ます。

工程5 送って、履歴を残す

PDFにして送り、いつ誰にどの版を出したかを残し、あとで探せる状態にする工程です。案件が増えると、ここが分からなくなります。

「去年のあの家と同じ工事、いくらで出したか」。これを探すのに時間がかかっているなら、工程5が重い会社です。

どの工程が重いかで、見るべきソフトの型が変わる

重い工程が決まると、見る棚が1つに絞れます。工程4・5が重い会社と、工程2が重い会社では、見るべき製品がまったく違います。

清書と送付が重い会社が見る型

工程4と5が重い会社は、見積書から請求書までまとめて作れる型を見ます。クラウドで使うものが多く、外出先のスマートフォンから見られる製品もあります。

この型は、数量の拾い出しを手伝ってくれません。拾った結果を速く形にして、送って、探せるようにする道具です。自社の様式をどこまで再現できるかと、だれが確認して出すかの順番(承認フロー)が要るかどうかで選び分けます。

数量の拾い出しが重い会社が見る型

工程2が重い会社は、建築向けとうたう製品を見ます。説明を読むと、内訳を階層で積み上げる機能、複合単価を持つ機能、原価と実行予算を扱う機能が並んでいます。

その代わり、覚えることが増えます。前にシステムで苦労された方が一番警戒するのはここだと思います。入れる前に、自社の工種でどこまで登録が必要かを確かめてから決めるのが安全です。

案件と原価の管理が重い会社が見る型

5工程の外に置いた原価の突き合わせは、ここで扱う型の話になります。工事の途中で原価が合っているか分からない、という悩みが先に立つ会社は、見積を入口にした案件管理の型を見ます。見積と発注と原価が同じ案件にひもづく製品です。

ただ、この型は入れる範囲が広い分、動き出すまでに時間がかかります。5名規模で社長が兼務している会社なら、まず工程4・5から始めて、原価は次の段に回す進め方もあります。

無料のものでも足りるのは、どの工程か

一番多い質問は「無料の見積作成ソフトで足りるのか」だと思います。工程で答えると、はっきりします。

足りる見込みがあるのは、工程4と5が重い会社です。清書して、PDFにして送り、保管する。この範囲なら無料で使えるものでも形になります。

足りないのは、工程2と3が重い会社です。階層での積算や複合単価は、無料の範囲に入っていないことがほとんどです。5工程の外に置いた原価の突き合わせも同じで、無料かどうかの前に、案件管理の型を見るかどうかの判断になります。なお、無料で使えるものには作れる枚数や使える人数に条件が付いている場合があるので、そこは各製品のページで確かめてください。

ソフトを入れたあとに増える仕事は何か

増える仕事は2つあります。商品と単価の一覧を作る仕事と、値上がりのたびにそれを直す仕事です。

商品と単価の一覧を、誰が作って誰が直すか

製品の説明には「商品や取引先を登録しておけば次から呼び出せる」と書かれています。その登録を最初に作るのは自社です。よく使う建材と工種を並べ、単価を入れる作業が最初に来ます。

直す仕事も続きます。私は音声から見積のたたき台を作るデモを自分で作りましたが、そこに入れた既定の単価は、作った時点の値でした。資材の価格が動けば、そのぶんズレます。技術の話ではなく、だれがいつ直すかを決める話です。

5名規模で社長が兼務している会社なら、ここを決めずに契約しないほうがいいと考えています。登録を作る人と直す人が決まっていないと、半年後に「前の単価のまま出していた」という形で戻ってきます。

導入の最初の30日で何から手をつけるかは、建築・リフォーム会社のAI導入は何から始めるかに別でまとめました。

音声や写真から見積を作る道具は、どこまで来ているか

図面をスマートフォンで撮ると、約5分で見積書が届くところまで来ています。ただし対象の範囲は限られます。

他社の製品は、図面を撮ると見積が届くところまで来ている

リフォーム産業新聞では、パナソニック ハウジングソリューションズの「写真de AI積算アプリ」が紹介されています。図面をスマートフォンで撮影すると、約5分で見積書と提案ボードがメールで届くもので、対象は内装ドア・収納・床材・巾木・廻り縁などと報じられています。新人でもたたき台を作れることによる教育効果にも触れられています。

出典:リフォーム産業新聞 写真de AI積算アプリ

工程で見ると、ここが狙っているのは工程2と3です。拾い出しと単価当てを機械側に寄せる作りで、見積作成ソフトの大半とは別の場所を埋めています。対象の工種が決まっているのも、裏を返せば範囲を絞って精度を取っているということだと思います。

自分で作ってみて分かった、整った表のあぶなさ

私も、音声から見積のたたき台を作るデモを自分で作りました。作って一番こたえたのは、出てくる表の見た目です。

品番を言わずに話すと、既定の単価が当てられ、小計と諸経費まで計算された状態で表が出ます。品番を指定して出した見積と、見た目は同じです。手で作ったものと見分けがつきません。拾える工種も、このデモでは外壁・床・壁紙・浴室の4つだけで、会話に出てきた洗面台は最初から見に行っていません。

もうひとつ、道具全般に言える注意があります。入口の素材が欠けていても、出口の体裁は整って出てくることがあります。見出しが付き、箇条書きが並んでいると、中身が欠けていても気づきにくくなります。

だから私は、道具を選ぶより先に「人が必ず見る行」を決めることをおすすめしています。

契約する前の30分で、自社の見積を確かめる

やることは2つです。直近3件の見積を出して工程ごとに時間を書くこと。人が必ず見る行を先に3つ決めることです。

直近3件の見積を出して、工程ごとに時間を書く

机に、直近3件の見積を並べてください。そこに、工程1から5までの時間を思い出せる範囲で書き込みます。正確な実測でなくてかまいません。3件並べると、どの工程に時間が寄っているかが見えます。

順番としては、道具を探す前に業務を分けるほうが早いと考えています。リフォーム産業新聞の連載では、工務店・カワノの例が報じられています。月100件を超える請求書の処理を工程に分けてみたところ、課題は、請求書のファイル名の付け替え(リネーム)にあると分かり、そこに絞って仕組みを作った経緯です。リネームというのは、スキャンした請求書のファイル名を業者名や邸名に付け替える作業のことです。先に業務を分けたから、当てる場所が1つに決まったのだと受け取っています。

出典:リフォーム産業新聞 生成AI活用の連載vol.4

工程に割って時間を書く手順は、建設業の人手不足にAIは効くのかでも3ステップで整理しています。

人が必ず見る行を、先に3つ決める

次に、どんな道具を入れても人が必ず見る行を3つ決めます。私がデモを作ったあとに決めたのは、この3つでした。

  • 品番や仕様が決まっていない行
  • 数量が現調のメモに残っていない行
  • 単価の出所をその場で説明できない行

この3つを先に決めておくと、「全部見直すなら手で作るのと同じでは」という迷いが消えます。作る仕事と、決まった3か所を確かめる仕事は、同じ量ではありません。

体験版で確かめる3つの質問

製品の体験版や説明の場では、機能の数より先にこの3つを聞くのがいいと思います。

  1. 今使っている自社の見積様式のまま出せるのか。どこまで変えられるのか
  2. これまでExcelで作った見積と単価の一覧を、取り込めるのか
  3. お客様の名前や工事の内容は、どこに保存されるのか。社外に出る範囲はどこまでか

3つ目は、前にシステムで思っていたのと違う結果になった会社ほど、先に確かめておく価値があります。答えが曖昧なまま進むと、あとで社内の運用が止まります。

音声や写真から出てきた表は、どこまでが機械の仕事で、どこから先が人の仕事として残るのか。自分で組んだデモの挙動は、リフォームの見積・積算AIデモの中身に実装のまま書きました。品番を言わなかったときに何が起きるかも、画面のとおりに載せています。

あわせて読みたい「話しただけで見積ができる」は本当か──リフォームの見積・積算AIデモの中身を公開します

まとめ

  • 見積作成ソフトが速くするのは、清書・計算・保管の3か所
  • 数量を拾う判断と単価を選ぶ判断は、入れても人に残る
  • 自社の見積は5工程に分ける。現調・拾い出し・単価・清書・送付
  • 工程4・5が重い会社は、見積から請求書までまとめて作れる型
  • 工程2が重い会社は、階層で積算できる建築向けの型
  • 原価の突き合わせは5工程の外。先に気になる会社は、見積を入口にした案件管理の型
  • 無料のもので足りる見込みがあるのは、工程4・5が重い会社
  • 増える仕事は2つ。単価の一覧を作る仕事と、値上がりで直す仕事
  • 他社の製品は図面を撮ると約5分で見積書が届くところまで来ている(リフォーム産業新聞の報道)
  • 整った表は、既定値で埋まった行も同じ見た目で出てくる
  • 契約前の30分でやること。直近3件の工程時間と、人が見る行3つ

製品の一覧を見ても決まらないのは、比べる物差しが自社の側にまだ無いからです。自社の見積を工程に分け、どこが重いかが決まれば、製品の一覧はずっと読みやすくなるはずです。

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