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業界・経営

建設業の人手不足、小さな会社の打ち手──自社はどの型かの見分け方と進める順番

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7兆5,119億円。2025年の住宅リフォーム市場の推計です(矢野経済研究所調べ)。前の年より2.5%増えています。

建築・リフォーム会社向けにAI導入支援を行う株式会社Polestar AIの深瀬雅己です。

仕事は減っていません。それでも、求人を出しても応募は来ない。辞めた1人の補充もつかないまま、来月の工程表だけが埋まっていく。建設業の人手不足を夜に調べる社長は、だいたいこの状態にいると思います。

この記事は、従業員50名以下の戸建てリフォーム会社・工務店の社長に向けて書きます。

この記事で分かること

  • 建設業全体の数字を、自社の人手不足にどう当てるか
  • 人手不足を3つに分けて、自社がどれなのかを見分ける確認
  • 「処遇と休みの見直し・外国人材・仕事を減らす」のどれを先に置くか
  • 打ち手が自社の規模で現実的かを、お金・支える人・効き始める時期で当てる見方

この記事が向かない人・扱わない範囲

「AIを入れれば人が採れる」という答えを探している方には向きません。採用も定着も、道具が代わりにやってくれるものではありません。

就業者の数の推移や求人の倍率といった業界全体の統計は、この記事では扱いません。2030年問題の解説も扱いません。扱うのは、自社で数えられる数字と、打ち手を選ぶ順番です。

外国人材の受け入れについても、在留の制度や要件の説明はしません。当社の専門ではないからです。扱うのは、自社の規模で選べるかどうかの見方だけです。

建設業の人手不足は、業界全体の数字では測れない。自社で数えられる数字を見る

深刻さは、業界全体の数字では測れません。社長が見るべきなのは、自社で数えられる3つの数字です。

検索すると、就業者の数の減り方や求人の倍率が並びます。原因として挙がるのは、高齢化、若手の入職の減少、休日の少なさ、現場のきついイメージ。どれも当たっていると思います。ただ、どれも明日の自社では動かせません。

建設業全体の数字は、戸建てリフォームの会社の実感とずれる

建設業という言葉は広いです。土木も、ビルも、大手の工事も入ります。全体の求人倍率が高いことは、自社に応募が来ない理由を説明してくれません。

会合でその数字を聞いても、戻ってから何かが変わるわけではない。この感覚は正しいと思います。

私自身、メーカーの側から工務店へ新規開拓の営業に回っていたころ、業界の数字はひととおり頭に入っていました。それでも、社長が何に困って何を探していたのかは分かっていませんでした。「リフォーム業界で働いてはいたけれど、社長がどんなところを探していたかまでは全然わからなかった」。これが当時の自分です。業界の数字を知っていることと、目の前の会社の状態が分かることは、別だと思っています。

代わりに、自社で数えられる数字が3つあります。

  • 直近1年に出した求人で、面接まで来た人数
  • 直近2年で辞めた人数と、入社から辞めるまでの月数
  • 社長が、現場に出ない仕事に使っている1週間の時間

3つ目は、たいてい誰も数えていません。見積の打ち直し、請求書の処理、現場写真の整理、打合せの記録。週に10時間かかっていれば、月では40時間を超えます。この月あたりの合計時間が、あとで打ち手を選ぶときの材料になります。

この3つを紙に書くところまでが、最初の一手だと考えています。

住宅リフォームの市場は縮んでいない

「そもそも仕事が減って、人手不足も落ち着くのでは」と考える方もいらっしゃると思います。数字を見ます。

矢野経済研究所の調査では、2025年の住宅リフォーム市場規模は7兆5,119億円で前年比2.5%増と推計されています。2026年は7.7兆円、同1.9%増の予測です。資材費と人件費の高騰で工事単価が上がっていることも指摘されています。

出典:矢野経済研究所 住宅リフォーム市場に関する調査

2026年の数字は予測で、確定した実績ではありません。その点を割り引いても、仕事が減って人手不足がゆるむ、という見通しはここからは読めません。

仕事はある。単価も上がっている。足りないのは、それを回せる人の時間です。

人手不足は3つに分かれる。応募が来ない/入っても辞める/人はいても回らない

打ち手を選ぶ前に、自社がどの型かを決めてください。型が違うと、効く打ち手が変わります。

1つ目は、応募が来ない型です。求人を出しても面接まで来ない。この型には、賃金や休みの見直しが正面から効くと考えています。

2つ目は、入っても辞める型です。採用はできているのに、1年か2年で抜けていく。求人の出し方を変えても、同じことが繰り返されやすいと感じています。

3つ目は、人はいても回らない型です。人数は去年と同じなのに、残業と休日出勤が増え、工期が押していく。社長の事務が夜に回るのも、この型に入ります。

自社がどれなのかを見分ける

事務所のパソコンで、15分あれば確認できます。

1. 応募の数。直近1年の求人で、面接まで来た人数を数えます。ほとんど来ていなければ、応募が来ない型です。

2. 辞めるまでの月数。直近2年で辞めた人の、入社から退職までの月数を並べます。1年から2年で抜ける人が続いていれば、入っても辞める型です。

3. 人数と工期。社員の人数は前の年と同じでしょうか。同じなのに残業・休日出勤・工期の押しが増えていれば、人はいても回らない型です。

実際には、2つ以上当てはまる会社が多いと思います。その場合に私がおすすめする順番は、3つ目の「人はいても回らない」から手をつけることです。

理由は2つあります。採用や処遇の打ち手は、効き始めるまでに月単位から年単位かかります。そしてもう1つ。回らない現場にそのまま新しい人を入れると、その人も同じ理由で抜けてしまう場合が多いと思います。

「人を増やす」以外の打ち手は3つ。小さな会社が考える順番

検索して出てくる対策は、整理すると3つです。処遇と休みの見直し、外国人材の受け入れ、いまの人数で回すために仕事を減らすこと。

従業員数人から数十人の会社では、私は「仕事を減らす」を先に置くことをおすすめします。原資が要らず、支える人が少なくても始められて、変化が週単位で見えるからです。

処遇と休みの見直し

いちばん正面から効く打ち手です。ただ、毎月の固定費が増えます。原資をどこから出すかを決めないまま賃上げに踏み込むと、翌年に戻せなくなります。

原資の出どころは、たいてい単価と工期です。見積に時間がかかって提出が遅れ、値段の交渉に押される。その流れが残っている会社では、賃上げの話は後ろに回りがちだと感じています。

原資を探すなら、数えるのは2つだけで足りると考えています。1つは、直近の受注で、現地を見てから見積を出すまでにかかった日数。もう1つは、提出が遅れた案件のうち、値引きに応じた件数です。この2つを並べると、単価と工期のどちらに原資が埋まっているかが見えてきます。

助成の制度もありますが、条件は年度ごとに変わります。制度名を並べるより、労働局や商工会の窓口で自社の条件を確かめるほうが早いです。

外国人材の受け入れ

制度の要件は当社の専門ではないので、ここでは扱いません。自社の規模で見るときに確かめることだけ挙げます。

  • 教える人を1人、継続して出せるか。現場に出ている職人から1人抜けても工程が組めるか
  • 住まいと生活の面倒を、誰が見るか
  • 来てもらってから戦力になるまでの期間を、持ちこたえられるか

5名の会社と30名の会社で、いちばん差が出るのは1つ目だと考えています。誰かが教える時間を出せないなら、受け入れの話はそこで止まってしまうと思います。

確かめる先は、受け入れを支援する業界団体や行政の窓口です。制度の説明を記事で読むより、自社の工種と人数を伝えて聞いたほうが確かだと思います。

いまの人数で回すために仕事を減らす

現場の手は減らせません。クロスも貼れませんし、屋根にも上がれません。減らせるのは、現場に出ない時間です。

見積の打ち直し、打合せの記録、請求書の処理、写真の整理。この時間が戻れば、いま社内にいる人が現場側の仕事に向けられる時間が増えます。文章や記録を扱うAI(ChatGPTなど)が効くのは、ここだけです。

渡すのは、毎週必ず起きて、判断の要らない作業です。金額が妥当かを見るのは判断なので、人に残します。どの作業から手をつけるかの数え方は、建設業の人手不足にAIは効くのか(事務の時間の返し方)で3つの手順にまとめました。

打ち手が自社の規模で現実的かは、お金・支える人・効き始める時期で当てる

打ち手を選ぶときは、この3つに当ててください。答えられない打ち手は、今年はやらないほうがいいと考えています。

お金が続くか。一度だけの出費と、毎月の出費を分けます。そのうえで、毎月いくらまでなら半年続けられるかを先に決めます。半年もたない額で始めると、途中で止まって何も残りません。

社内で支える人がいるか。週に何時間、誰が出せるかを名前で決めます。社長しかいないなら、始めるのは1つだけです。

いつ効き始めるか。来月の工程を組む立場からすると、ここがいちばん大事だと思います。

下の表は、3つの打ち手を私の見方で並べたものです。制度や助成の細かい条件は入れていません。

打ち手お金支える人効き始めるまで
処遇と休みの見直し毎月の固定費が増える。原資が先に要る社長と経理で決められる次の決算期から。応募への効果はさらに先
外国人材の受け入れ来てもらう前の準備に負担が出る教える人を1人、継続して出す月単位。戦力になるまで時間がかかる
仕事を減らす(現場に出ない時間)小さく始められる週に数時間使える人が1人週単位。減った分数で確かめられる

3つ全部に手を出す余裕のある会社は、この規模ではほとんどないと思います。だから、どれか1つです。

人を増やす打ち手を捨てる話ではありません。採用も処遇も、効き始めるまで時間がかかる打ち手です。その時間を持ちこたえるために、いまの人数で回る状態を先に作る、という順番の話です。

人手不足の実感の中身が、社長自身の事務の時間だった場合は、作業を工程に割って時間を測るところが入口になります。次に読むなら、建設業の人手不足にAIは効くのか。返せるのは「事務の時間」だけですをお読みください。工程に割って時間を実測する手順を3ステップで書いています。社長一人で最初の1件を進める場合の進め方は、AI導入は何から始めるか(最初の30日)にまとめています。

あわせて読みたい建設業の人手不足にAIは効くのか。返せるのは「事務の時間」だけです

まとめ:自社の型を決めてから、打ち手を1つだけ選ぶ

  • 業界全体の数字では、自社の深刻さは測れない。数えるのは自社の3つ(面接まで来た人数/辞めるまでの月数/社長が現場に出ない仕事に使う週の時間)
  • 住宅リフォーム市場は縮んでいない。2025年は7兆5,119億円・前年比2.5%増、2026年の7.7兆円は予測値(矢野経済研究所調べ)
  • 人手不足は3つに分かれる。応募が来ない/入っても辞める/人はいても回らない
  • 2つ以上当てはまったら、「人はいても回らない」から手をつける
  • 打ち手は3つ。処遇と休みの見直し/外国人材の受け入れ/仕事を減らす
  • 従業員数人から数十人の会社では、仕事を減らすが先。原資が要らず、週単位で確かめられる
  • 選ぶ前に当てるのは、お金が半年続くか/支える人が週に何時間出せるか/いつ効き始めるか

型を決めて、打ち手を1つに絞る。来月の工程を組む前に、そこまでは決められると思います。

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